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永田先生と米国獣医皮膚科学会専門医のデボア先生の対談公開!

 

今回は犬アトピー性皮膚炎の新たな治療薬、「サイトポイント®」が日本で発売されるにあたり、2019年9月1日(日)に東京・福岡、9月2日(月)に大阪・神奈川・愛知で、ゾエティス・ジャパン株式会社主催「犬アトピー性皮膚炎に対するモノクローナル抗体治療薬 サイトポイント®」特別セミナーが開催されました。

米国獣医皮膚科専門医であり、「犬アトピー性皮膚炎国際調査委員会による標準的治療ガイドライン」の作成メンバーのお一人である、ダグラス・デボア先生とどうぶつの総合病院の副院長であり、アジア獣医皮膚科専門医である永田 雅彦先生とが行なった対談を今回はご紹介致します。

この対談では、ゾエティスから発売される新しい治療薬「サイトポイント」をどう活用するのかから始まり、日本の獣医療は、専門医制度ができ始めたばかりで、飼い主さんたちが専門医というものを区別できるのかなどと言った様々な問題を抱えている状況。そんな日本の獣医療を、より発展・成熟しているアメリカと比較し、今後の課題解決について2人の皮膚科のスペシャリストたちが対談します。

 

Douglas J.DeBoer
(ダグラス・デボア)

ウィスコンシン大学・マディソン校、獣医皮膚科学教授、米国獣医皮膚科学会専門医

 


 

編集部

先生は何度も来日していると思いますが、日本の印象はいかがですか。

デボア先生

日本は世界の中でもすごく好きな国の1つです。それはいろいろな理由があるんですけれども、日本の人たちは私が来るたびにすごく歓迎してくださって、まるで皇族になったかのように手厚く扱ってくださるんですよね。

いい食事、ご飯もおいしいですし、楽しい仲間と楽しい会話を交えながら過ごすことができるのは私自身にとってすごくいい時間になっていますし、もちろんそれだけではなくて日本という国がとても美しいというのもあるので、すごく好きです。

編集部

きのうはほかにも札幌と博多で、今日はこの後大阪に移動されて、あと名古屋と横浜と全部で6カ所で、ゾエティスさんはそれだけサイトポイントに自信があるということだと思います。きのうは非常にためになるお話でしたが、獣医の皮膚科の歴史を踏まえて、サイトポイントについていろいろわかりやすくお話ししていただければと思います。

サイトポイントを初め、近年いい薬がたくさん出てきたと思っています。3年前にアポキルが出て、今度はサイトポイントが出て、いい薬が出てくるのはとてもうれしいことですけれども、それをどうやって使うかが臨床家に求められているものではないかなと思います。

その中で、今日本にはいろいろなポジションの臨床が、あるいはいろいろなポジションの先生がいるだろうと思っています。近年では、専門医が出てきたり、皮膚科に造詣の深い臨床の先生がいたり、あるいはあまり皮膚科には興味のない先生がいたり、それぞれの先生がどういった治療をしていくか。おそらく、ステージというか、それぞれの場所に分けた薬の使い方、知識の使い方がなければいけないと思っています。

そういう意味で、日本は獣医学に関して今はまだ発展途上だと思っているんですけれども、既に成熟した医療を持っているアメリカにおいて、これまでどんな経緯があったか。そういったものを我々も共有させてもらいながら、今いる3つの違うポジションがどうコミュニケーションをとっていったらいいか、そんなお話を聞けるとうれしいなと思っています。

永田先生

デボア先生

まず、獣医療の発展に関してなんですけれども、これはどの国においても、流れとしては、まず専門医、たとえば皮膚科専門医というのが現れてきたらば、そういう方々が増えてきて、そして学会が形成される。学会が形成をされると、そのもとにトレーニング制度が生まれてくるという形になっていきます。

ただ、そういう専門医集団だけではなくて、やはりどの国でも、皮膚科にとても興味を持っているけれども、そういった専門的なトレーニングまでは受けていない先生方もたくさんいらっしゃいます。それは、そういうトレーニングを受ける機会がないのかもしれませんけれども、それでも自分なりに非常に関心を持って努力をされている。たとえばオンラインでいろんなセミナーを受講されている方もいると思います。もう1つ、永田先生もおっしゃっていた獣医師のカテゴリーとして、あまり皮膚科に対しては関心がない、興味がないというタイプの臨床の先生もいらっしゃいます。

このように、今大きく3つに獣医師の集団が分かれたことになりますけれども、新たな治療法や治療薬が出てくるときには、その方々全体をターゲットにした薬なので、あまり皮膚科に対して知識がないような一般臨床の先生でも使うことになります。その時にやはり大事だと思っているのは、もし興味がなかったとしても、獣医師の責任として適切な使用法は学ぶべきなのではないかと思っています。いい薬だったとしても、最大限の効果を発揮するためには正しい使用法が必要になってきますし、不適切な使用になってしまいますと、それほどの効果が得られない可能性もあるからです。ですから、誰が使うにしても、責任は十分認識する必要があるのではないかと思っています。

対談中のデボア先生

対談中のデボア先生

編集部

永田先生にお聞きしますが、皮膚科に興味のない方に対して、間違った使い方をしないようにするための対策というか、そういった意味で多分教育があると思うんですが、いかがですか。

皮膚病は最もよくみる疾患の1つで、臨床に出るからにはすべての先生が知っておかなきゃいけない病気だと思っています。と同時に、皮膚は一番目に見える場所なので、体の異常を表現することもたくさんあるので、皮膚が好きでなくても、皮膚の異常をみる力があれば、内科や外科の診断や治療のレベルが上がるだろうと思っているんですね。そういう意味では、臨床家にとって皮膚を学ぶのは必須だと思っています。

その中で皮膚科があまり好きではない先生がいることを十分承知しながら、ぜひ知っておいてほしいのは、皮膚がどんな異常を出すかということです。特に皮膚は体を守る鎧としての仕事をしているので、日々さまざまな一過性の問題が起こります。傷ついてみたり、腫れてみたり、痒くなってみたり、多くの問題は一過性なので、適切な対症療法で様子をみているものです。

ただ、その様子をみるが延々だとどうなるか。自分が対症療法としてやったときに、治ることが前提なので、それが治らないとしたら、これは一過性ではないという判断をしてほしいんですね。そのときには、皮膚に造詣の深い先生や専門医に紹介することを考えてほしいと思っています。

永田先生

 

編集部

歴史上のことで何かお聞きしたいことがあれば。

今アジアでは皮膚科の専門医制度が立ち上がって、少しずつレジデントトレーニングや専門医試験が行われているところです。これまでのスタイルから新しいスタイルに移行している中で、いわば新しい時代を迎えようとしている中で、まだまだ我々が出合ったことのないものとどう向き合っていくか、そんな苦労がいろいろあります。そういう意味で、もう既にいろいろな経験をしているアメリカで、どんな問題があったか、それをどうやって克服していくべきかといったお話をお聞きしたいなと思っています。専門医制度ができることで、従来の臨床家の集団でつくられた動物医療がどういうふうに変わっていくのか。

永田先生

デボア先生

専門医制度とかパラダイムシフトが起きたことに伴って、問題は確かに生じました。攻撃なものとかややこしいことがいろいろあったんですけれども、ちょっと雑誌に掲載するような内容ではないかなと思います。

笑顔で対談する2人

笑顔で対談する2人

患者さんの目線に立ったときに、誰が一般の先生なのか、誰が皮膚科の専門医なのか、混乱をしている感があるように今思っているんです。もしそういった場面がアメリカにもあったのであれば、それをどうやって解決していったか、患者さんに対してどういうインフォメーションを提示していったかというお話を聞けるとうれしいですが。

永田先生

デボア先生

こういった専門医制度が確立されている国においては、やはりそういった問題はどこでも生じていると思うんですけれども、まずは、誰だったらば自分のことを専門医と呼んでよくて、誰だったらば呼んではいけないかという、そこの線引きをどうするかというところが出てくると思います。それを誰が決めるのかですけれども、多くの場合は獣医師会などのような団体が間に入って、あなたは自分のことを専門医と呼んでいいですよ、あなたはだめですよというふうに線を引いていることが多いようです。

アメリカの場合には専門医制度が確立されてもう25年~30年たっているんですけれども、そうだったとしても、たとえば私が何かのパーティーに参加をしたときに、初めての方とお話をしていて、「お仕事は何をされているんですか」と聞かれたときに、「獣医師なんですけれども、皮膚科医なんですよ」という話をすると、「えっ、獣医さんなんですか。皮膚科医なんですか」と聞かれて、「いや、両方なんです」と言うと、「獣医学が専門に分かれているということは知らなかった」とすごく驚かれることが今でも多いんです。なので、一般の方々にそういう認識がまだ十分に浸透していないというのが、30年たった今でも続いているということをまず申し上げたい。

その中で、どのように認識を浸透させていくかですけれども、それは国だとか地域の獣医師会だとか団体が、マーケティングだとかPRを通して認識を高めていく必要があるのではないかと思っています。

もっともだなと思いました。もっともだなと思うんですが、誰が指導的立場で責任を持って区分していくか。そこは難しいところですよね。国がやるのか。獣医師会がやるのか。誰がその責任を背負うのか。そこが今大きな課題になっているんじゃないかなと思っているんです。

永田先生

対談する永田先生

対談中の永田先生

デボア先生

そうですね。誰が決めるかということに関してですけれども、国によって誰が決めるかが結構違うようですけれども、一番多いパターンは、やはり獣医師会が間に入って線引きをするということのようです。そしてすべての獣医師の利益のため、それから飼い主さんの利益のために、みんなが納得できるような区分けをしているようですけれども、それぞれの国の法律だとか規制区分も変わってきますので、それに応じて判断していかなければいけない、あるいは考え出さなければいけないということなのかもしれません。

もう既に日本でも獣医師会がそういった取り組みはしていると思います。数年前から専門医制度をどう解決していくか取り組まれているんですが、やはり問題が非常に大きいので、なかなか結論を出せない。その中で、どういう方法で解決していくかだけでなくて、いつ、どういうタイミングでそれを実行していくのかも大きな問題だと思っています。

おそらくそれを決定するのは、獣医師会でも国でもなく、飼い主さんであったり社会なんじゃないかなと思っています。社会が本当に必要なものをアピールしていくことで、考えを提示していくことで、我々がそれに見合ったものを、既に準備してあったものを上手に出すことができるんじゃないかなと思っています。いい動物医療をつくるために、ぜひ、飼い主さんたち、社会の力をおかりしたいですね。

永田先生

デボア先生

少し最初に戻りたいんですけれども、今興味のレベル、それから受けているトレーニングのレベルに応じて、獣医師たちを大体3つの集団に分けることができるという話がありました。その中でサイトポイントが皮膚科領域において非常に効果が期待できる新しい治療法であるということは間違いないんですけれども、それだけではなくて、モノクローナル抗体医薬というまったく新しいカテゴリーの薬が生まれたということも、みんなが十分に理解しておく必要があると思います。

皮膚科に興味がない先生たち、あまり得意としていない先生であったとしても、モノクローナル抗体医薬は皮膚科領域だけの薬ではなくて、近い将来、さまざまな疾患に対して出てくるカテゴリーの薬となってきますので、それがどういった特徴を持って、どういったものなのかを理解するのは非常に重要なのではないかと思います。

 

編集部

ニーズに応えるというのは難しいですね。獣医療側の受け皿がしっかりしていないとうまくいかない気がします。すみません。私の勝手な感想です。でも、それは先生が筆頭で皮膚科学会会長として置かれていることもあるし、アジアの専門医そのものを踏まえての動きだと思います。

そうですね。私は日本で仕事をしていて、多くの先輩方にいろいろ指導をいただいて、あるいはアメリカに行ってアメリカの先生方からいっぱいいろんな教育を受けて、私が今やらなければいけないのは、それを仲間や後進たちに伝えることだと思います。気がついたら30年皮膚科をやっていて、そろそろ若い先生たちにポジションを譲らなければいけないところにも入っているので、元気なうちに、いいものは皆さんに伝えていきたいと思うし、逆に、みんなをサポートするような仕事をしていきたいと思っています。そういう意味では、制度を整えていくのは非常に大事な今の仕事だと思っています。

永田先生

 

以上が2人の対談となります。いかがだったでしょうか?

現在の日本の獣医療における課題は、成熟している現代のアメリカでも共通部分はあるということは少し驚きましたね。しかし、アメリカの獣医療が解決している部分でもまだ日本では解決できていない部分は多くあります。日本でも見習い、改善し、臨床医・飼い主・患者たち、みんなに利益があるようにしてゆきたいですね。

 

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