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専門医にインタビュー/獣医皮膚科専門医(耳科)/永田 雅彦 先生

永田 雅彦 (ながた まさひこ)

獣医師、博士(獣医学)、アジア獣医皮膚科専門医

1)先生の略歴(自己紹介も含む)

日本大学卒業後、Cornell University皮膚科研修、日本獣医畜産大学研究生を経て、1994年どうぶつ皮膚病センターを設立、1997年ASCを設立

2011年どうぶつの総合病院皮膚科部長、診療統括部長、副院長、取締役(診療、教育研究、人事、広報担当)、2019年病院長に就任

現在一般社団法人日本獣医皮膚科学会会長、アジア獣医皮膚科専門医協会理事

2)なぜ当院に耳科ができたか?

耳は音を聞く組織なので、感覚器としての異常を治す医療が求められます。しかし動物が聞こえているのか、あるいは聞こえていないのか、それが生活にどのように影響しているのか、残念ながらよくわかりません。ですから、体系だった学問が発展していません。世界中、どこにも専門医がいません。

音を拾うには集音器が必要です。これが外耳です。この領域は皮膚に覆われています。したがって外耳に異常があると皮膚科が登場します。もちろん音を聞くのは神経ですから、神経科を受診することもあるでしょう。そして腫瘍など、明らかな構造的なゆがみがみられれば外科に相談が必要です。

耳の異常で困ったら、どこに受診したら良いのでしょう。耳はいろいろな組織が関わる、いろいろな治療が参加する、いわゆる境界疾患です。なかなか1人では立ち向かえません。さらに小さな構造を扱う際には特殊な医療機器も求められます。当院は、ありがたいことに耳をみるのに不可欠な診療科や医療機器がそろっています。これを使わない手はありません。そこで、受診のきっかけになりやすい外耳の異常に精通し、さらに外耳道はもちろん中耳を観察する内視鏡を日々使用している皮膚科が軸となって、当院に耳科外来を新設することになりました。

3)耳科をいつ受診したらいいのか?

耳の病気は大きく二つにわかれます。外耳を中心に目に見える病変を扱う事例と、耳そのものの異常ではなく内耳神経の異常を訴えている事例です。これまでは前者が皮膚科、後者が神経科の担当でした。実際には両者がからむ事例もあり、ご家族やかかりつけの先生が何科と考える場面もあるはずです。もう悩む必要はありません。これこそ耳科です。

日常的な耳の異常として、外耳道の湿疹(耳垢性湿疹)、過剰な耳垢や耳漏(耳垢栓塞、感染)あるいは耳を気にする様子(外傷、異物)、また顔の動きの異常(前庭症状、顔面神経麻痺)や首を傾けた状態(斜頸)などがみられます。みえない中内耳の異常は様々な原因で発症しますが、腫瘍や感染も配慮が必要です。通常の症状や治療経過ではないと思ったら、早め早めの受診をお勧めします。特にフレンチブルドッグやパグなどの短頭犬種では、頭蓋骨の構造的機能的特性から命に関わる重大な病気(真珠腫性中耳炎)もあります。

4)耳症例はどんな診療をうけるのか?

当院では通常の臨床評価はもちろんのこと、複数の内視鏡をもちいて無麻酔で外耳道を観察しています。もちろん外耳道に耳垢や耳漏があると詳細な観察ができないので、刺激の少ない液体で耳道を洗浄してから観察しています。もちろんこれらは治療にも不可欠で、外耳はもとより中耳の洗浄も行います。中耳は奥深い場所にあるので、チューブを用いて洗浄しています。信じられないかもしれませんが、ひどい痛みや、とても怖がりな性格でなければ、通常は外来で麻酔をかけずに観察や治療をしています。もちろん重症例であれば、麻酔をかけた処置を行います。

当院では麻酔をかけてCTやMRI等の検査を行い、診断後ただちに場所を移動して同日治療まですすめる努力をしています。その際、治療を兼ねた耳の中の病変を切除しそのまま院内の病理検査に回し、さらに切除部位の処置や特殊治療として半導体レーザーを使用しています。

5)当院が目指しているのは…

冒頭で触れましたように、日本だけではなく世界中どこにも耳の専門医がいません。これから育っていく分野、育てなければいけない分野です。ありがたいことに、当院には耳科診療に不可欠なハードとソフトがそろっています。現状の対応はもちろんのこと、日本から世界に耳科学が発信できる医療に取り組むとともに、その中から真の耳科専門医が育つ環境をつくりたいと思っています。そのためにも外部から耳の造詣の深い先生、またひとの耳鼻科の先生にもご参加をいただきます。そして、当然のことながら、この取り組みには飼い主様とかかりつけの先生方のご理解とご協力が不可欠です。夢に向かって邁進します。どうぞよろしくお願い致します。

 

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