浅川 翠 (あさかわ みどり)
獣医師、米国獣医病理学専門医(解剖病理学、臨床病理学)
略歴
2006年に麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、1年間、東京大学付属動物医療センターで内科系研修医として勤務。
2010年に米国ノースカロライナ州立大学にて獣医解剖病理科レジデント修了し、米国獣医病理学専門医(解剖病理学)Diplomate ACVPを取得。
2013から2016年に米国コーネル大学にて臨床病理科レジデント修了。
2015年に2つ目の米国獣医病理学専門医資格(臨床病理学)Diplomate ACVP取得し、ダブルボーダーとなり、2016年に当院主任となる。
どうしてこの専門科目を選択したのですか?
浅川先生
私は学生時代、低学年で実習の組織標本を作成する仕事に携わり、高学年になり病気を勉強する時期となったとき、『どうやって病気を診断していくか』と『顕微鏡の世界』にすごく興味を持ったのが最初です。学生時代にペンシルバニア大学の実習で専門医が働く教育病院を目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。
卒業後は、東京大学の動物医療センターの内科系診療科で臨床の研修医をさせていただき、難治性の病気の動物の診断・治療を学ばさせていただく機会があり、その時に自分の中で「本当に自分の診断はあっているのか?」また、「今は治せない病気を将来的に治せるようにするにはどういう仕事をする人が必要か?」を考えた時に、 『病気の診断を正確につけるということ』と『将来的に、今は分かっていない病気のメカニズムがわかれば、治療できること』は、つながるのでは?と考えて、病理科の専門医になることを決めました。
ジェネラリストとどのような関係をもちたいですか?
浅川先生
お互いに、病気を治す、という同じ目的を持っているチームの一部と感じてもらえたら嬉しいです。どうしても病理というと、苦手意識がある獣医師の先生方が多いと思います。「診断書の用語が難しくてわからない」や「どうやって治療に生かせばいいのかわからない」と戸惑う方も多いと思います。
そこで、当院はクリニックに併設された病理科なので、『動物たちの病気を治すための病理診断』を第一に考えているので、先生方ご自身の動物病院で「動物たちの命を助けたい」「正確な診断をご家族や皆様に提供したい」と考えている全ての獣医師の皆様に使って頂ければと思っています。
クリニック併設のメリットはどのようなものがありますか?
浅川先生
診断から治療まで、トータルケアができるところです。例えば、近くの動物病院さんですと、当院で病理診断を出した後に、外科や画像診断の精査など必要な時には当院へそのまま紹介して頂けます。
遠方の一次診療の先生方でも、病理診断に画像診断も合わせてご利用することで、その主治医の先生方の『診断をサポートする』という意味で、当院の病理科診断サービスを使って頂けるところがメリットだと思います。
やりがいを感じるのはどんな時ですか?
浅川先生
自分がチーム医療の一員であると感じることができるときです。
臨床医や他の専門医の先生方に信頼されて一緒に仕事ができること、また、全国の獣医師の先生方に信頼されてサンプルを送っていただくことは責任感がある仕事でやりがいを感じます。
また、診断した動物が診断しただけで終わらず、その動物が適切な診断に基づいた治療を受け、元気になって退院していくときにはとても嬉しいです。ただ、治らない病気の診断をすることもあり、そのときはすごく胸が痛むのですが、その診断があることによって『限られた大切な時間をどのように過ごすか』ということをご家族の方々へ考える機会を与えることができる。そういったときは病理医で良かったなと思います。
浅川先生
死後検査(献体)の話もすると、当院では、ご家族からご希望があれば、亡くなってしまった動物の死後検査、つまり病理解剖をすることもあり、その子の病気の進行や、手術の合併症がなかったかなどを主治医の先生やご家族の皆さんに対して、答えを出すことができます。
「どうして死んでしまったのだろう?」「自分が悪かったのでは?」とご家族の方がご自身を責められていることが多いので、こう言った病気で亡くなってしまったので、ご家族の方のせいではないですよ」とご説明ができるときは、その方の『心の負担を生涯に渡って軽減してあげることができる』かなと。これが病理医ならでは、の話ではないかなと思います。
どんな人に病理の分野で働くことを考えてもらいたいか?
浅川先生
動物の病気を治したいと思う方や、病理の世界はすごくたくさんの病気を知らなければいけないので、学び続けることが好きな方はすごく向いていると思います。
男女ともに、ライフスタイルに変化があるとき、例えば、出産や結婚、家族の介護など。いろいろな事情があり自分のためだけに時間を使えなくなったとしても、病理科は比較的、仕事の時間の調整がしやすいので、私自身も自宅で働いたりすることもあるので、生涯にわたって働き続けやすい科だと思います。
以上、病理科の専門医、浅川先生へのインタビューでした!